VINTAGE REPRODUCT from HANGER PARK / Officer shirts

皓彦中道
3月31日
読了時間: 5分

更新日：4月1日

１.製作意図

洋服における基本の「き」とも言える白シャツ。

ヴィンテージ業界において、やはり経年変化による黄変や汚れは否めず、クオリティを気にする私たちとしては満足できる仕入れができていませんでした。

なら、作ってしまえと始めた企画です。

こうして制作に向けて走り始めましたが、それこそ私たちがオリジナルアイテムを作る上で、その意味を深く考えさせられることになります。

というのも、白シャツは各ブランド各メーカーの多くがリリースしている為、世に溢れすぎているカテゴリ。千差万別にある白シャツ。ブロードだとムードが硬いし、オックスやリネンだとカジュアルに寄り過ぎる。

白シャツは、全体のスタイリングを纏めながら、どこまでも寄り添ってくれる”名脇役”であると考えています。

その上で、HANGER PARKらしさを表現することに苦心しました。白ご飯のような、いい意味で何も考えずにワードローブの中から手が伸びるシャツを目指そうとすればするほど、デザインやディティールは削がれてシンプルに。どのアプローチから試行錯誤しても、結果似た答えに辿り着く。

なんだったら、途中少し投げ遣りになったこともありました。

が、構想から完成まで3年。サンプル作製を繰り返すこと3回。

大人のワガママに応える、ヴィンテージとの親和性が高いシャツが完成するに至りました。

２.仕様解説

デザインソースは、イギリス軍のOfficer shirts。

では、なぜOfficer shirtsなのか？

年齢を重ね、これまでの経験則上「TRAD」要素も大事にする私たちにとって、ヴィンテージと相性抜群の”名脇役“が必要だと認識しました。それには様々なヴィンテージを見てきた中で、Officer shirtsが正に適合していました。ですが、既存の元ネタはヴィンテージ故に、ストック問題とサイズ問題とで常時リリースが難しいため、リプロダクトしてリリースすることを決定した、という経緯です。

そして、こちらをリプロするにあたり、なによりパターンとサイズバランスに殊更気を遣いました。

言わばスタンドカラーシャツ。の、なにをもってOfficer shirtsか？

襟を正して、背筋を一つ通すような。私たちなりの解釈で紐解いていくと、それは“凛とした佇まい“ だと一つの答えに辿り着きました。

それにはやはり、襟元のネック周りの印象が大事だと。

襟のネックの曲線と衿腰の高さをミリ単位で調整。襟腰は2.7mmと高め設定。階級で言えば少尉以上の士官に支給されていたOfficer shirtsの名残を表現しました。

そして私たちが提案するシャツなので、首元のスカーフ使いは欠かせない要素の一つ。それも考慮して、第一釦と第二釦の幅も微調整。一つ開ければすっきり見え、二つ開けてもセクシーになり過ぎないバランスに。

ヨークから伸びるタックを深くとって身幅のゆとりを確保しながら、アームホールと袖幅は広くしない設計に。身幅L、袖幅Mみたいな。そうすることで、Aラインを描きながらだらしなくないシルエットを形成できました。

ヨーク下の深いタックが、絶妙な背中のシルエットを表現。 size 2着用 / 172cm

そして悩んだのは裾デザイン。オリジナルに倣うならスクエアカットなのですが、印象が真面目過ぎたので思い切って変更。ラウンドテールした裾から、脇にかけては抉れるくらいに差をつけました。トラウザーのポケットに入れる手を阻害しない仕様に。

袖口はシンプルながら、昨今アパレル業界では袖の筒幅を調整する釦は省かれがちですが、それは惜しまずつけて、少しだけ懐かしい印象を残しました。細い腕にもアジャストできます。

縫製も丁寧に。シームは折り伏せ縫い。脇にはガゼットも。妥協なしです。

２.生地について

生地選びも難航中の難航。天然素材が大好物な私たちは、当初こそCotton100での制作を目指し、それを軸に見繕っていましたが、テキスタイル業界も逼迫した昨今の物価高は天井を知らず、その状況に打ちのめされる瞬間が何度もありました。

しかしながら、こちらもオリジナルに倣うなら綿ポリだなと。Cotton100だけでなく、視野を広げたところ、化学繊維事情もクオリティが高くなっていることを学ぶ良い機会になりました。

といったわけで採用したのが、タイプライターのCotton 70 / Polyester 30 の混合素材。綿の柔らかさ/優しさとポリの強さ/ハリコシ感を併せ持つことは当然。ナノテクを応用することで、撥水/撥油性に優れ汚れにくく、洗濯で落ちやすい、吸湿性/透湿性は従来の綿素材と変わりなく、速乾性/耐久性がある..と、生地開発チームも“完全無欠“とまで表現される素材です。総括して超ハイスペックですね。

実際、飲みの席でタレを胸元に盛大に溢し、応急処置で水を含んだペーパーで拭き取りましたが、その場で全部拭えたんです。念の為、帰宅後に特にシミ取りなどせずに普通に洗って確認しましたが、シミ無しでした。気を遣わず普段使いできる、と自信が確信に変わりました。

そしてカラー展開を考えていましたが、“White“と対になるようなカラーを考えている中で、スタイルに馴染む色を見つけました。

“Mushroom“ カラー。なんなら、こちらの方が多めに作製しました。店頭でカラーで悩んでいる方多めです。